医療の高度化やデジタル技術の進展により、臨床試験を取り巻く環境は大きく変化しています。GCPリノベーション、分散型臨床試験(DCT)、Single IRBやデータの二次利用といった構造変化は、臨床試験の効率化を進める一方で、「何を大切にするのか」という問いを改めて浮かび上がらせています。
こうした背景のもと、ICH E22は患者の選好(preference)を科学的に扱い、臨床試験や医薬品開発の判断に取り入れる新たな枠組みとして提示されました。また、ICH E6(R3)やE8(R1)では、試験の計画段階から患者を含む多様な関係者の視点を取り入れる重要性が示され、ヘルシンキ宣言ではMeaningful Engagement(意義ある参画)が明記されるなど、患者との関わりそのものが研究倫理の重要なテーマとなりつつあります。
一方で、患者の選好や経験をどのように理解し、どこまで試験や開発に反映すべきかについては、なお多くの課題が残されています。患者のためのデータが、都合のよいデータになっていないか。患者の声を取り入れることが、本当に患者のためになっているのか。そうした問いに向き合うことが求められています。
本セッションでは、新しいGCPのもとで、患者の経験や価値を臨床試験や医薬品開発に活かす「意義ある参画」について、多様な立場から議論します。正解を選ぶのではなく、多様な価値をすり合わせ、ともに形づくるプロセスに焦点を当てることで、これからの臨床試験のあり方を考えます。